多分小学生の頃、ジローズの「戦争を知らない子供たち」という歌が大ヒットした。
もちろん僕も戦争を知らない子供たちの一人だった。因みに父も母も戦中派で、父からはボルネオの戦地で首狩り族の部落で駐屯していた話、母からは東京でB29から落とされる焼夷弾がバラバラ近くに降り注いで怖かった話を聞いていた。今をコロナウィルスとの戦争状態と言っている評論家もいるけれど強制的に徴兵されて国のために闘ってきた当時の人が聞いたらとても同じとは言えないのではないだろうか。
その少し前、僕の住んでいた家は醬油工場兼住居で、トイレが住居と工場の間に設置されていて、夜真っ暗な通路を歩いてトイレに行くのが恐怖だった。おまけに当時は水洗便所ではなくいわゆるボットン便所。お化けがでないかという恐怖と落ちたら死ぬ?という恐怖が重なっていた。
今だからカミングアウトするが、一人で用を足すのが怖くて怖くて当時の便所紙(トイレットペーパーではなく四角いチリ紙)をわざとボットン便所に投げ捨てて、
「おかーちゃん、紙なくなったーーーーーー」
と大声で叫んでは母親に便所まで来てもらっていた。筋金入りのチキンハートキッズであり紙を大事にしない不届きものだ。母は恐らくわかっていたはずだが、それでも怒らずに「どれだけ紙使うのよ~」と言っては紙を持ってきてくれた。その後引っ越しすることになりその恐怖から解放された。新しい家のトイレはもちろん家の中にあり、おまけに洋式の水洗便所だった。
今の子供たちはもちろん「戦争を知らない子供たち」だが、それに加えて「水洗便所を知らない子供たち」でもあるだろう。
それから数十年の月日が流れ、そして僕は62歳になった(飛び過ぎやろ)。
去年末期がんを宣告されて以来、朝のウォーキングと瞑想が日課になった。日が昇る前に起きて堤防沿いの小道をひたすら歩き、時には全力疾走し、そして朝日に向かって瞑想をする。その堤防のいつものコースの先にたくさんの水仙が自生していた。今が丁度咲きごろの水仙を僕は何本か引き抜かせてもらい、リュックに入れて家に持ち帰ることにした。一部を庭に植えて、一部は花瓶にさしてトイレの中に置いた。するとたちまちトイレの中は水仙の香りで満たされた。
もし彦摩呂が突然「トト、トイレ貸してくださーい」と乱入してきたら思わず、
「この水仙は自然の芳香剤やーーーーーーーー」
とカメラの前で叫ぶに違いない。元々トイレで長い時間本を読んだりするのが好きな方だが、もう朝起きてから寝るまでずっとトイレの中で生活したいくらいこの空間は癒される。僕は「水洗便所を知らない子供たち」にも「水仙便所」の素晴らしさは知ってほしいと思った。
やっ、ジャスミン堀井だ。
水仙を便所に生けて、「これがホンマの水仙便所やおまへんか~」と月亭可朝(故人)さんの歌を思い出したことがきっかけでここまで引っ張ってしまった僕をどうか大目に見てやって欲しい・・
で、何が言いたかったかというと。
自然の美しさ、香り、美味しさを再認識できたのも「ガン」のお陰だというこだ。改めて気付きを与えてくれたガンさんや神様やご先祖さまや僕の回復を祈ってくれた全ての方々に感謝したい気持ちでいっぱいだということだ。
僕がなぜ治ったのかははっきりとはわからない。何が功を奏したのかを特定することができないくらい色んな事に取り組んだからだ。それでも感覚的には「功を奏した」ことをいくつかは上げることはできる。
その一つが「祈りの力」だ。
年明けに届いた天外先生の「祈りの法則」を一気に読んだ。そこには「祈りの真髄」が書かれてあった。結論だけ表現すると、
「どんな状況下にいても、すべてに感謝していると、やがて感謝すべきことしか起こらなくなる!」
ということだ。因みに僕は天外塾の塾生でもあり、天外先生の著書もほとんど読んでいる。この著書にも紹介されていた瞑想には天外塾で指導を受けたものも有り、去年の春にガンが発見されてからずっと実践している瞑想の一つでもあった。
僕は毎朝、ひたすらガンさんを含めた自分のパーツ、細胞、身体全体、共生している常在菌、生んでくれた両親、ご先祖に感謝した。そして恐らく僕の回復を祈ってくれた方々がそれなりにいた。その方々への感謝。そして目に映る草、木、鳥、空、水、太陽、月、風への感謝も。
こんなことを主治医に言ったら「フッ」と鼻で笑われるのがオチだ。
でも「祈りの力」は体感的には必ずあると感じている。そんなことを言っていると、「私は神様にいつも祈りを捧げているのに全然想いが届かない」と感じている人もいるかもしれない。でもそれは恐らく「祈り方」が間違っているのではないだろうか。そう、祈りには法則があったんだ。
この本はそれをわかりやすく解説していただいている。もちろん信じられない人は永遠に信じられないかもしれないが少なくとも僕は体験からも法則はあると信じている。
「風の時代」を軽やかに生きたい人にはお勧めの一冊だ。
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