社保潜脱の闇:これを機に保険代理店は健全化に向かうのか
社保潜脱の闇:これを機に保険代理店は健全化に向かうのか

 


社保潜脱行為に関するお詫び

この度、私が名誉理事長を務める保険乗合代理店協会(当協会)の元理事(辞任済み)が経営する代理店において、社会保険の潜脱行為が行われていたことが判明いたしました。

当協会は、かねてより社会保険潜脱行為の是正を重点取り組みとして掲げ、行政機関へ陳情を重ねるなど、業界の健全化を率先して推進すべき立場にありました。それにもかかわらず、手本となるべき当協会の理事自らがこのような事態を引き起こしたことは、痛恨の極みであり、会員の皆様の信頼を著しく裏切る結果となりましたことを、深くお詫び申し上げます。

更に。

上記事案が当協会会員のみならず各種メディアにて取り上げられたことにより、社会全般に対して保険代理店への不信感を招くことになりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

本当に申し訳ございませんでした。

(ここから先は長文です。保険業界にご興味のある方だけお読みください)

こぞってメディアが取り上げる

先週木曜日に日経新聞の電子版、金曜の朝刊、土曜の朝刊と3日連続で保険代理店の潜脱行為が取り上げられ。

テレビ朝日のグッドニュースでも「渦中の保険代理店を直撃」という見出しでかなりの時間を割いて取り上げられました。

土曜日の日経朝刊記事には。

「日本の医療や年金を支える社会保険料を、安心が売り物であるはずの保険販売の代理店が抑えていた疑惑は単なる不正以上の重みを持つ。」

と結ばれており。

生命保険協会の隅田会長のインタビュー記事では。

「協会として重く受け止めている」と。

これは保険業界全体の問題であると認識されたということなのでしょう。

今保険業界はBM問題に端を発した事案に伴う規制強化やプルデンシャルの金銭不祥事が社会問題にまで発展する事件が相次ぎ、信頼が大きく揺らいでいます。今般の保険代理店の社保逃れ疑惑は更なる信頼失墜に繋がる可能性が高く。

ワタシも乗合保険代理店の健全化を推進していた立場として大きく責任を感じています。

 

保険代理店の社保潜脱の背景

実は。

保険代理店の募集人が雇用の必要がない時代が長くありました(委託型募集人)。

それが。

2015年3月末を持って廃止され、2015年4月以降は保険募集人は基本雇用化を余儀なくされたのです。

当時ワタシは法改正を前提とした金融審議会ワーキンググループに参考人として参加していたのですが(2012年6月7日~2013年6月7日)

その中では本件は全く議論されていませんでした。

ところが。

その後程なくして「委託型保険募集人は違法」と断じられました。

まさに我々にとっては青天の霹靂で。

「今回の保険業法改正項目には入っていないものがなぜ突然違法とされるのか」と耳を疑いましたが。

その理由は。

「君たちはすでにある現行法令に違反しているのだ。」と。

それが何かと言うと。

保険業法第275条再委託の禁止だとのことでした。

この法律の概要は、

契約者保護と募集の適正性を確保する目的から保険募集の再委託を原則禁止するというもので。ただし、特定条件を満たし、内閣総理大臣の認可を得た場合に限り、再委託は可能というものです。

つまり。

「保険会社はその子会社の保険会社に募集業務を委託し、更にその子会社の募集人が保険募集を行うという再委託を認めているが、保険代理店が募集を第三者に委託することは保険業法275条に抵触しているのでただちに適正化をしなさい。」

となったのです。

因みに。

この法律が施行されたのは1996年です。振り返ればその時から既に違法だったわけです。

ではなぜそれから18年間放置され続けたのか、という疑問が残ります(残りませんか?)

 

ワタシは2001年に乗合代理店を立ち上げていますが、当初は委託型の組織でした。

ではその当時、なぜ委託型が許容されていたのか。

そこにはそれなりの根拠がありました。

それは。

当時の保険会社向けの総合的な監督指針の中にある、

『(7) 保険募集に従事する役員又は使用人届出(法第302条の届出)
① 法第302条にいう保険募集に従事する役員又は使用人とは、代理店の事務所に勤務し、かつ、保険募集に関し所定の教育を受け、その代理店の管理のもとで保険募集を行う者をいう。』

という項目でした。

この「勤務」「教育」「管理」という3要件をクリアしていれば保険業法275条の「保険募集を行ってよいのは、代理店の役員か使用人に限る」という要件を満たせると解釈できたのです。この敢えて「雇用」ではなく、「勤務」と書かれていることは保険代理店の事務所に勤務していれば必ずしも「雇用」でなくても良いという理解のもとで「委託」がスタンダード化しており、保険会社からも金融庁からも指摘を受けることはなかったのです(当時直接金融庁にも確認しました)。

ではそれが18年後のタイミングでなぜ違法と指摘されたのでしょうか?

その背景としては。

1996年の規制緩和を受けて急成長してきた乗合保険代理店の台頭に危機感を抱いた大手保険会社が、法律に抵触していることに着目し適正化を働きかけた、という説もあります。

また。

委託型という形態で大規模化した代理店の募集人の質に大きなバラツキが生じており、教育や管理も充分に行われる体制には無く、組織のガバナンスやコンプライアンス的にも潜在的リスクを多く孕んでいることから適正化することは不可欠であった、という説もあります。

いずれにせよ。

規制緩和により急成長してきた委託型募集人を束ねる組織は、この時点でビジネスモデルの変更を余儀なくされたのです。

この時点で我々は募集人を「雇用化」することとなり、社会保険は募集行為による対価に対して全額で社会保険を付保することが求められるようになったわけです。

前置きが恐ろしく長くなりました・・

そして。

 

ここから当協会の社保潜脱の適正化活動がスタートするのです。

 

なぜなら。

 

潜脱行為が横行したからです・・

 

保代協は設立以来、乗合保険代理店の健全化を推進してきた団体です。

適正化される時には、なんとか委託型を継続できないかと粘り強く交渉をし続けましたが、決まってしまえばそれを潔く受け入れて、新しい制度で持って業界を健全化しようと舵を切ったのです。

 

そして。

 

潜脱行為を無くすために金融庁、厚労省、生保協会、政治家等にも水面下で交渉にあたっていました。

 

当時の想いを綴ったブログです↓

怒り心頭。この業界、このまま正直者が馬鹿を見ていていいのか。

 

その地道なロビー活動が実り、その後厚労省と金融庁が連名で適正化の徹底を発信しても貰えました(下記抜粋)

 

年管管発0328第5号

金 監 第 632 号

平成29年(2017年)3月28日

厚生労働省年金局事業管理課

金融庁監督局保険課

<厚生年金保険法等に基づく届出の適正化の徹底について>

2.標準報酬の対象となる報酬について

報酬とは、賃金、給与、手当などの名称を問わず、労働の対償としてうけるすべてのものをいいます。

保険代理店使用人に対する報酬の中で特に注意すべき点として、契約件数等実績に応じて支払われる報酬は、保険代理店と使用人との間の委託契約が禁じられている観点から、標準報酬の対象となる報酬に含まれることとなります。この取扱いに齟齬が生じることのないよう、適正な取扱いをお願いいたします。

 

そんな努力の甲斐もなく・・

残念ながら社保潜脱代理店は無くなることは無かったということです。

 

少し恨み節に聞こえるかもしれませんが。

我々(保代協)には調査権も処分権もありません。同業者に対する啓蒙活動とその権限を持つ保険会社や協会、監督官庁に指導を依頼することしか無く、できる範囲で活動をしてきました。

でもしかし。

適正化以降、その状態を重く受け止め、指導、取締りに積極的に動いて貰うことは叶わず、まさに正直者がバカを見る状態が10年も続いてきたのです。

それがここへきてようやく社保潜脱、再委託について厳しく調査指導をしていく方向に変わってきたことをとても喜ばしく受け止めていました(その矢先に当協会内部で社保潜脱が発覚をしました・・)

 

メディアは、保代協会員には誓約書を取り付けると発表していましたが、実は以前(2018年)から入会時に誓約書を取りつけていました。

誓約書は以前から存在していた

以下は誓約書の抜粋です。

公的保険を補完する民間保険を取り扱う保険乗合代理店として、また保険業法に定められた保険乗合代理店の適正な教育を実施する義務、および再委託禁止の観点から以下記載の項目に該当せず、適正に社会保険を付保していることを誓約いたします。

1 . 給与・外務員報酬の支払い形態にかかわらず、基本給部分のみを社会保険料算出の対象額とし歩合給部分を社会保険の対象外とすること。

2 . 従業員に関する実際の労働時間を正確に把握せず、 社会保険の対象とならない短時間労働を適用すること。

3、. 募集の対価に値するものを募集人の給与・報酬以外の名目で、特定関係法人などへの委託業務の対価であると装って委託費として支払うこと。(上記は、保険業法で定められている再委託に該当する)

 

今回指摘を受けた元理事代理店もこの内容を知らないはずはありません。厚労省金融庁連名の発信文書も知らないはずはありません。

それでも管轄社会保険事務所が事業所得にかけなくても良いと言われたことを優先し、固定給部分にしか社会保険をかけない状況を継続されていたのです。

もしワタシなら自身の立場(保代協理事)も勘案し。

例え年金事務所の担当が「事業所得にかけなくても良い」と言われたとしても、過去発信されている発信文書を説明し、「それでも本当に事業所得にはかけなくても良いのか?」と確認するでしょう。更には厚労省に連絡し「管轄年金事務所から事業所得にはかけなくても良いと言われたが本当にかけなくてもいいのか」と確認するでしょう。もしそれが間違いだと指摘されたら、その年金事務所に指導してもらえるよう強く依頼するでしょう。

厳しく追及しているように思われるかもしれませんが、それ程拘って活動をしてきたのに、という想いなのです。

よって。

以前から誓約書を取り付けていたにも拘らず実行されていなかったことを鑑み、再度誓約書を取り付けることにしたのです。

 

保険業界の常識は社会の非常識

社会保険の潜脱行為や再委託行為の目的は一つ。

募集人個人も会社も社会保険料を払いたくないという理由です。

個人は手取りが多い方が良い。会社は法定福利費を極力抑えたい。

労使双方の利害が一致し、その代理店の規模が急拡大する。

 

これは一般社会から見た常識でしょうか・・

 

まして我々民間保険業に携わる者は公的保証では賄いきれない不足分を補い、広く日本国民に安心を提供することをミッションとしています。

一見社保逃れは、直接的に顧客に不利益を与える事案で無いかもしれません。「少額しか納めない分将来の自分の年金が少ないのはそれで納得してるんだからそれでいいだろう」と開き直る募集人もいるかもしれません。ですが、公的保証制度は基本賦課方式だということを忘れてはいけません。世代間の助け合いによって成り立っているのです。

つまり。

民間保険業に携わる者としての職業倫理に背き、間接的には日本国民の利益をも毀損していたことになるのではないでしょうか。

過去の委託型募集人制度が非常識だったと捉えるしかないのです。

その上で。

その亡霊?を断ち切り、一般社会の常識へと変換していくしかないのです。

 

これを機に保険代理店は健全化に向かうしかない

もちろんワタシも聖人君子ではありません。

過去も今も良かれと思ってやっていたことでもそれが裏目に出たこともあります。

でもしかし。

やってしまった事実を塗り変えることはできません。

その度に反省し、より良い方向に変えていくしかないのです。

 

このブログがどれだけ影響力があるかはわかりません。

ですが。

大手メディアが本事案を取り上げたことで、国民の関心が寄せられている今だからこそ。

監督官庁、業界団体、保険会社、保険代理店、保険募集人が一体となり社保潜脱を業界から無くすことに取り組むべきではないでしょうか。

特に我々代理店経営者と所属する保険募集人は自らが襟を正し、高い職業倫理と高度な金融のプロフェッショナルとして、社会から無くてはならない存在として認められる存在を目指そうではありませんか(オーーーーーーーーーーーーッ)

*本内容はあくまで個人的な見解です。保険乗合代理店協会の統一見解ではありません。

 

保険毎日新聞に当社が紹介されました↓

https://www.holos.jp/newspaper0428/

https://www.holos.jp/wp-content/uploads/newspaper0428.pdf

 

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