
トイレのドアを開けると広がってくる百合の香り。
その芳香に包まれながら用を足していると妻が。
「あんた、えー加減にしときや。いつまで入ってんのん!」
「糞くそ(・・・)」
と心の中でつぶやく俺。
いっそこのままここで死ねたら倖せかもしれないと思えるほど百合の香りには癒しの力がある。
元来ワタスは香る花が好きだ。
薔薇、水仙、ジャスミン、そして百合。
季節ごとに庭に咲くこれらの花をトイレに活けるのをとても楽しみにしている。
そもそも香りにはストレスを軽減させる効果があると言われていて。
人間の五感には、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚があるが、この中で嗅覚の刺激だけが大脳辺縁系にダイレクトに伝わるといわれている。
その中でも。
百合(ユリ)は、古くから生薬(百合根・百合花)として利用されており、精神を安定させイライラや不安を鎮める高い鎮静効果があり、心身の疲労回復や不眠の改善にも役立つという。
特にその華やかな香りは、脳内のセロトニンやドーパミン等の神経伝達物質の分泌を促すと考えられており、抗うつ効果や気分の改善、副交感神経を優位にさせ張り詰めた心身の緊張を優しく解き放つ効果もあるとされている。
また。
百合の根っこは茶碗蒸しの中によく見かけるあの百合根のことだ。
漢方や薬膳の世界では、百合根には「寧心安神(ねいしんあんじん)」と呼ばれる、心を落ち着かせて精神を安定させる作用があるとされている。
・イライラや不安の解消: 精神的な疲労からくる焦燥感やストレスを緩和。
・不眠・睡眠の質の改善: 多種のアルカロイド成分が含まれており、自律神経を整えて寝つきの悪さや多夢(夢を多く見ること)を改善。
・心身症へのアプローチ: 漢方の古典「金匱要略」には、精神的な抑圧などが原因で起こる心身症のような病態に対して、百合根を主薬とした漢方薬(百合知母湯など)を用いることが記されている。
更に。
その他の健康効果として鎮静作用以外にも、百合には以下のような優れた身体へのメリットがある。
・潤肺止咳(じゅんぱいしがい): 呼吸器や肺を潤し、乾燥からくる空咳を鎮める。
・美肌効果: 体の内側から潤いを与えるため、肌の乾燥や吹き出物の予防に役立つ。
・高血圧予防: 野菜類の中でもカリウムがトップクラスに豊富で、余分な塩分を排出。
凄いじゃないか、百合。
この効果効能を裏付ける説がある。
昔から鮎釣りをするヒトタチの間でまことしやかに語り継がれる説だ。
そりは。
山百合の咲く場所では鮎が釣れないのでその場所を避けろという逸話だ。
鮎は元々攻撃性の強い魚で、縄張り意識が強い。その性質を応用したのが友釣りだ。
「おれの陣地に侵入しやがって」と怒った鮎が攻撃を仕掛けてきたときに針に引っ掛けるというセコイ釣り技法だ。
ところが。
山百合のエキス?の影響で獰猛な鮎がおとなしくなって「えーよえーよ。俺にはそんなチンケな縄張り意識はないから一緒に泳ごーじゃないか」と優しい鮎に変わるというのだ(これがホンマかどうかは不明・・)
鮎の性格が百合によって変化するならニンゲンだって当然変化するはずだ。
みんなの周りにいつもイライラしている上司はいないか?
機嫌がいい時と悪い時の部下に対する態度がはっきりしていて、いつもその顔色を窺ってしまうタチの悪い上司だ。
もしそんな奴が会社にいたら。
そいつの机に百合の花を花瓶に入れて置いてやろう。

恐らくその上司は程なくして柔和で優しい上司に変貌していくだろう。
それでも効果が見られない場合は。
百合根を「これ、今若いギャル(死後・・)の間で一番人気があるスイーツなんです。」とかなんとか言って百合根をその上司の口の中に無理やり10個くらい放り込んでやろう。
それでも効果が無かった場合には。
花瓶の中の百合を取り出して紐でくくってその上司の首にぶら下げて、「てめえなんか一生百合を首に括り付けて匂い嗅ぎながら生きて行けバカヤロー」と言ってやろう。
恐らくここまでやればその上司の性格は見違えるように温和になるに違いない。
もしこれを読んで、そこまでやってやろうと思った自分がいたとしたら。
その前にまず自分が百合の香りを嗅いだ方がいいかもしれない・・
これから百合の花が咲く季節だ。四季折々の花を愛で、香りを楽しむことで人生が少し豊かになる。
どうだ。
君もトイレに百合の花を活けてみないか?
トイレが癒しの空間に変わる。
そして。
嫁さんから怒られる体験を共有しようじゃないか。
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