告白。実はワタス、癌宣告を受けました。vol.9
告白。実はワタス、癌宣告を受けました。vol.9

前回の振り返り

はーい!末期がんのマッキー堀井でーす!!(脳転移はしていないはずです・・)

今週19日東京都は遂に休業要請が全面解除され、全国移動も解禁されましたね。でも20日連続で2桁の感染者が出ているだけに少々心配です。ここ暫くは会議や商談はもっぱらリモートでしたが、今週はのっぴきならない会議もあり2日間東京に滞在しました。実はワタスの場合、今体況上コロナに感染するわけにはいかないので、人と接近してすれ違う時はマスクの中で息を止めていました。ところが流石に街には人が増えだし、すれ違うたびに息を止めていると逆に窒息死しそうになるのであきらめました(笑)

新幹線も一時の頃の1車両貸し切り状態ではなくなりました。東京からの帰りの新幹線では、通路を隔てた隣の上品そうな男性は席に座るなり消毒剤をプシュプシュとおよそ他人が触れた可能性のある所に振りかけ、それを丁寧にウェットティッシュで拭き取るという徹底ぶりでしたが、社内販売でポテトチップスとコーヒーを注文し、女性販売員から手渡しで受取りそれを手づかみでバリボリと美味しそうに食べている光景をみて、「それは別にかまへんのんかーい!」と突っ込みを入れたくなりました(笑)全国移動が解禁となるとかつてのようにほぼ満員状態の新幹線になるのでしょうかね。コロナウィルスが新幹線に乗って全国に広がらないことを祈るばかりです。

医療関係者の方からの情報だと、感染するのは飛沫より圧倒的に手から感染するのだとか。なので、どうやら手洗いは小まめに充分すぎるほどした方がいいそうですよ。

さて先週は地獄の気管支鏡検査を経て、とうとう主治医から確定診断を受けたところまでを書きました。

告白。実はワタス、癌宣告を受けました。vol.8

結果的には想定通りのステージ4。もはやショックはありませんでした。「やっぱりな・・」という感じです(笑)左右の肺に数か所の転移に加え、リンパ節、副腎、腰骨にまで転移しており、正真正銘の末期ガンでしたが脳転移まではしていなかったことで逆に少しラッキーとさえ思ったくらいです。ただ、それと同時にこれからどんな治療が始まるのか、これによって、これからの活き方や過ごし方が大きく変わることになるのが大いに気がかりでした。

それではvol.9の始まりです。

治療方針確定

「脳の転移はありませんでした。」

「そうですか。よかったです!」

「それから精密検査の時にゲノム検査も併せて行いました。」

「そうなんですか。」

前回来た時には確定診断の後に更に検査をしてから治療方針を決めると聞いていたので早い対応に内心少し驚いた。そして主治医はお世辞にも綺麗とは言えない字で書き綴ってある面談票を見せた。そこには、

肺ガン 腺ガン Ⅳ期 抗がん剤で増大抑制 EGFRプラス Exon21 L858R⇔Exon19de

と書いてあった。

「ゲノム解析の結果、EGFR遺伝子が陽性でした。」

「はぁ・・」

「まぁ、細かくは色々あるのですが・・〇✕△̻☐・・・」

恐らく後半に書いてあるアルファベットのことだとは想像できたが、主治医もそれをあまり細かく説明まではしてくれなかった。独り言のようにゴニョニョ言われたことは理解不能、恐らく専門的すぎて言ったてもわからないと判断したのだろう。

「このEGFR遺伝子変異にはタグリッソという分子標的薬が適合します。分子標的薬というのは、直接腫瘍にアタックする抗がん剤の1つで比較的副作用は少ないです。これを早速明日から服用してもらいます。」

「そ、そうなんですか。わかりました。」

ここは理解できた。

「1日1錠服用してもらいます。」

「それだけですか?」

「それだけです。」

「入院とかは?」

「別に必要ありません。副作用は多少ありますが、少々でてもできればこれを飲み続けてください。全ての人に出るとは限りませんが、可能性としては下痢、湿疹、肝臓、腎臓、アレルギー、間質性肺炎などがあります。詳しくはこの後で薬剤師に説明をしてもらいます。」

まずは、適合する分子標的薬があったことにホッとした。実はいわゆる入院して点滴で入れる抗ガン治療をやることになったらどうしようと思っていた。既にガン治療についての書籍を何冊かは読んでおり、髪の毛も抜け落ち、正常細胞までも傷つけながらガン細胞を叩く抗ガン治療にはかなり否定的だったからだ。正直その時は、一般的な抗がん治療をやらなくてよければ少々の副作用なら大丈夫だろうと高をくくったのだ。ただ面談票に書いてある単語が1つ気になった。

「先生、ここに「増大抑制」と書いてあるのですが。これは増殖を抑えるという意味でガン自体を無くすということではないんですか?」

「はい、ガンは治りません。」

「・・・そうなんですか・・・」

「ガン無くならないんですか?」

妻が追い打ちをかけるように質問した。

「タグリッソは基本効果はありますが、それでも増殖するものがでてきたりします。その時は薬を変えることもあります。ただ、この薬より効くのは無いんですけどね。」

「そうなんですか・・わかりました・・」

なんか逆に飲んでも無駄みたいに聞こえるがな・・前回同様この主治医は基本クールというか、ネガティブなことを前面に伝えてくる。恐らく大学病院のスタンスはこれがスタンダードなんだろう。そう自分の中で納得させた。そして話しのキャッチボールがあまり弾まないまま質問をした。

「先生、最近コロナウィルスに感染しないように免疫力を上げましょうとよく言われていますよね・・」

この質問を主治医は途中で遮った。

「免疫?ガンになると皆さん不安になり、藁をもすがる想いでネットを検索されたりします。中には高額で妖しい治療を勧める情報が溢れていますので充分気を付けてください。余計なものは見ないほうがいいです。」

まず僕がしたかった質問は、

「副作用の影響を受けないためにも免疫力を上げるよう食事内容とか運動には気を付けたほうが良いと思うんですがどうでしょうか?」というものだったのだが、その主旨を伝える前に飛躍した返答をされてしまったのだ。

「じゃあどんなものを見ればいいんですか?」

「見るならオンコロ(https://oncolo.jp/)を見てください。」

「オンコロ?は、はい。調べてみます。」

結局したかった質問はちゃんとできずじまいで、

「食べ物とか運動は?」

「特に気にしなくてもいいです。」

「そうですか。何を食べてもいいんですか?」

「はい。」

「ゴルフとかも行ってもいいんですか?」

「しんどくなければ。それから今他に薬は飲んでいますか?え?飲んでない。サプリメントや漢方薬も暫くは飲まないでください。薬の効果がわからなくなりますから。特に漢方薬は何が入っているかわかりませんからやめてください。」

要は、私が処方する薬以外は何もしないように。それ以外は別に何を食べてもしんどくなければ運動もしていいという方針だった。免疫力については、「免疫力?はぁ?」という感じでそれ以上の質問すら受け付けないという雰囲気なのだ。。

「それから、コロナ感染にはくれぐれも気を付けてください。検査も診察もできませんから。暫くは家から外には出ないほうがいいです。奥さんはクルマの運転はされますか?できればこちらに来るとかどうしても外出する場合は公共機関を使わずに、クルマで移動されたほうがいいです。重ねて言いますがコロナ感染は命取りになりますからね。」

リスクへの注意喚起は万全だった。

「では2週間後にまた来てください。」

今回も10分程度の診察で終わり、その後は薬剤師の説明を受けた上で病院を後にし、薬局でタグリッソを貰い帰路についた。

ガンは一生治らないのか

少し拍子抜け感もあったがとにかく治療方針は決まった。ラッキーなことに適合する分子標的薬が見つかったことで入院して抗がん剤や放射線治療の必要はなく、まずは1日1錠薬を飲むだけだ。ただ、それでも増殖を抑えるだけで基本ガンは治らないとも言われた。それでいいのか。一生本当にガンは抗がん剤では治らないものなのか。その辺りは今一腑に落ちないままだった。

人間ドックの再検査で指摘されたのが3月11日。治療開始が4月7日なのでほぼ想定通りに約1ヵ月かかった。これでもゲノム解析をスピーディにやってもらったので早い方かもしれない。その間ガンが進行したのかどうかは知る術も無かったが、今後このまま主治医の言う通りにタグリッソを飲むだけで過ごせばいいのか。

ただ、僕は末期ガンを寛解させたサバイバーの書籍も既に数冊読んでいたので、自分も体内にできた、恐らく「自分のせい」でできたガン細胞を完全に無くしたいという想いは無くならなかった。そのためにすべきことは何なのか。まだ完全に頭の中では整理できていなかったが、自分の身体にできたガン細胞のメカニズムや抗がん剤治療における専門用語の理解も医師に対抗できるだけの勉強が足りなさすぎる。この自分事に対してもっと知識を付けないといけない。そしてもう1つ。

「なぜ僕はガンになり、なぜ末期になるまで見つからなかったのか」この解を腑に落とす必要があると感じていた。

 

さて、これから仕事はどうするか・・

当面入院はしなくていいとはいえ、治療は明日から始めなければならない。まずは経営陣に末期ガンが確定したことを伝えた上で、至急対策を練らねばならない。この30年ほど、24時間仕事のことが頭から離れない日は無かった。コロナ禍の真っ只中、その仕事中心のライフスタイルを見直す必要性がある。大きな決断の必要性を感じていた。

~続く~

インフォームド・コンセントへの個人的見解

インフォームドコンセントとは、病気の治療の際に、医師が患者に治療の必要性、治療の計画や見通し、効果やリスク、コストなどをわかりやすく説明した上で、患者の同意を得ることを言います。

アメリカでは、医療過誤裁判などの経験を通じて、医師には病状や治療に関して、患者に説明義務があることが定着しており、治験の現場では、被験者は常にリスクを理解し、同意の上で臨床試験に参加することが必要になっています。インフォームドの部分は医師側にある説明義務を、コンセントの部分は患者側が理解した上で同意することで成り立つのが、インフォームド・コンセントということが言えます。

これは金融業界で例えると、「提供者と消費者との情報の非対称性が大きいことから(知識の差が大きい)、顧客への説明責任を果たし、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を守ることを当局から強く求められている」のと同様の考え方と言ってもいいでしょう。

今回の私の事例は、クライアントサイド(私)から言うと、「最低限は果たされているものの、満足できるものではない」というのが偽らざる感想です。保険営業で例えれば、契約はするけど紹介まではしない営業マンという評価でしょうか(笑)専門用語がでれば、それを素人でもわかるようにかみ砕いて説明するのがプロの営業マンの基本です。もちろんドクターは営業マンではありませんが、インフォームドコンセントの理念に沿えばここは意識していただきたいところです。

あ、医師という職業について批判的なコメントを書いているように思われているかもしれませんが、基本私は医師を代表とする医療関係の方々に対して全面的にリスペクトしています。恐らく幼少期から青春時代にかけて、親御さんとの共同戦線でリソースを投入し、私とは比べ物にならないくらい勉強されてきた結果国家資格を取得されたのでしょう。それだけでも好き放題遊び惚けていたワタスと比べれば見上げたものです(笑)その前提に立った上での、重篤な病を宣告されたクライアントサイドが感じる期待値を込めているのだと理解いただければ幸甚です(笑)

インフォームドコンセントは元々アメリカ発の概念かと思われますが、アメリカにおける医師資格取得時(USMLE = アメリカ医師国家試験)のテストについて、興味深い医師のブログを見つけました。その一部を抜粋しますと、

『診察室に入る前から、テストは始まっています。待機中の立ち振る舞い等、プロフェッショナリズムを持っているかをしっかりと採点されます。診察室に入った瞬間から、アイコンタクト、仕草など事細かに採点されていきますが、一番大切なのは一人一人の患者様に真摯に向き合う姿勢を持つことができるか、だと思います。

学生は2つのカメラで観察され、患者役の役者(役者学校又は現役の役者)、カメラの向こう側の医師、そしてノートを採点する別の医師の3人によって採点されます。採点基準は大まかに分けて、

1)Spoken English Proficiency (SEP)、2)Communication and Interpersonal Skills (CIS)、3)Integrated Clinical Encounter (ICE)この3つです。』

1)は英語の能力です。着目すべきは2)3)です。

2)Communication and Interpersonal Skills (CIS):とはコミュニケーションとインターパーソナルスキル(他人と上手く関わる能力)が医師試験で審査されるのです。

『第一印象は我々の仕事で非常に大切です。そして現実の世界では、その時間で患者様は我々を信頼するかどうかを決めます。テストのために偽の自分で患者様と向き合いなさいと言っているのでは全くなく、医学生は日々真摯に患者様と向き合って欲しい、それが自分からのメッセージです。対人関係を築くスキルとコミュニケーション能力は、1週間や1ヶ月で備わるものではありません。1日1日の自分の生活がそこに現れます。ある先生は、医学部に入る前に人間性を磨く努力をしてから医学部を受験しなさい、と言っていました。自分もその通りだと思います。

医師は、医学的知識とアルゴリズムを使って診断また治療をするマシーンでしょうか?もしそうであるならば、10年落ちの中古のコンピュータの方が断然優秀だと思います。医師は、人間であり 患者もまた人間であるこれを忘れては、本当の医師にはなれません。些細なように見える上記のこともまたCSの採点基準に入っています。』

上記は医師に限らず、我々金融保険業界においてもそのまま反映できるものであり、対人コミュニケーションが不可欠な社会においては必ず身に付けておきたい考え方とスキルではないでしょうか。

3)Integrated Clinical Encounter (ICE):ICEでは下記が採点基準となります。

・臨床能力・適切な質問をする能力・適切な身体検査を選ぶ能力・診察/身体検査から適切な診断を下す・患者教育・カウンセリング・上記を元にしたカルテ作成

見てもわかるように、一番不合格の可能性が高いのは、ICEで間違いないでしょう。15分という限られた時間で適切な質問を行いながら身体検査を行い、診断を下し、その診断結果からオーダーをしたり、時にはERに行くようにアドバイスしたり、処方する薬について説明したりしなくてはなりません。また診察室を出たらすぐにコンピューターでカルテ作成を完成させます。与えられた時間は10分なので、もたもたすることはできません。

また患者役の役者さんたちも、さすが本物の役者なだけあり、非常に難しいタイプの患者役に(話の途中で怒鳴ったり、泣いたり)徹したりするので、一筋縄にはいきません。非常に幅広い医学的知識を要求され、且つ分かりやすく医療用語を使わずに説明する力をみられます。色々な参考書がこの対策の為に出ていますが、やはり今までの勉強の積み重ねと日々の実習での体験が何よりの教科書でしょう。このようにして、STEP2 CSで医学生として受ける国家試験は終わりです。』

私の浅い知識では日本の医師資格にはここまでの実践的スキルは合否判定にはなく(もちろん大学では学ばれるのでしょうが)、筆記試験で合否が決まりますので、医師によっては2)のスキルが抜け落ちている方もある程度存在してしまうのではないでしょうか(米国のレベル感も全く分かっていませんが)。話は少しそれるかもしれませんが、個人的には保険募集人の資格制度、特に乗合代理店の募集人もこのような実技試験を導入し、質の向上をはかるほうがより健全な業界になるのではないかと思料しています。

あ、ここで言いたかったことは、どんな職業でも対人関係能力は極めて大事なことだということを、クライアントの立場になるとよくわかったので、自分自身もこれから充分気を付けないといけないなと改めて思ったということです。つまりタイ人(ワタス)も対人に気を付けようと自省したというオチでした(笑)

 

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