実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)     第十四章 事実と感情の狭間。捨てる神と拾う神
実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)     第十四章 事実と感情の狭間。捨てる神と拾う神

第十四章 事実と感情の狭間。捨てる神と拾う神

 

起業したときに借りた事務所は10坪足らずの古びた事務所。10万弱の家賃からスタートした。その1年後に本格的に乗合代理店として立ち上げた時には25坪の事務所に移り、更にその1年後には手狭になり、同じビル内で60坪のオフィスに増床した。外部から資本も入れたこともあり、レイアウトも什器備品も一新した。順調な、いや今振り返ると順調すぎる滑り出しだった。そしてそれが一転し、大量の離脱者が出た。

 

 

―あかん、このままやったら潰れるかもしれん・・-

 

 

初めての挫折で圭太は完全に自信を喪失していた。

 

 

「研修なんて所詮あんたの趣味みたいなもんや。あんたやないとできんやろ。そんなん事業とは言わんで。」

 

「支社長と社長は全然仕事のレベルが違うんちゃいますか。朝倉さんは支社長の時はよかったけど社長なったらあきませんわ。元々その器やなかったん違いますか。」

 

 

もう一緒に仕事をしないと決めた時、初めて人は本音がでるものだ。圭太は自分で作った会社であるにも関わらず、会社に行くのが辛くて仕方なかった。

 

残ってくれた社員たち全員が自分のことを無能な社長と思っているのではないかと思ってしまい、目を見て挨拶もできない自分がいた。彼ら彼女らもいつ自分を見限り引き抜かれていくのではと不安に駆られてしまうのだ。

 

圭太は、それでもなにかの意思決定をせねばならなかった。

 

―それでも俺をまだ信じて残ってくれたライフナビゲーターやスタッフのためにこの会社を潰すわけにはいかん。今の優先順位はコストカットと資金調達や―

 

ずっとビクビクしている時間はなかった。まず圭太は既に投資してもらっていたベンチャーキャピタルの社長に連絡し、事情を説明し、追加の出資を依頼した。そして役員にプレゼンし、何とか数千万の資金を確保した。

 

そして同時にビルの管理会社にも連絡し、オフィスの縮小をお願いした。規模を縮小するのは忍びなかったがそれでも一旦はそうするしかなかった。たまたま元の25坪くらいのスペースが空いていて、急遽そこに引っ越すことができた。せっかく揃えた什器備品は狭くしたオフィスには入らないので他のオフィスに転用することにし、その引っ越し作業も極力自力で行うことにした。

 

ある日の真夜中のこと。

 

圭太は引っ越す前のオフィスにひとり残って本棚やデスクの整理をしていた。するとそこに10年来の友人が圭太の事情を知ってひょっこりそのオフィスに現れた。

 

「おお、ガンちゃん来てくれたんか・・」

 

既に脱サラして起業していた友人は、圭太が落ち込みながら一人段ボール箱に書類を詰めている姿を見て。

 

「元気ないなぁ圭ちゃん、元気だしいな。圭ちゃんな、今までが順調すぎただけや。俺かって会社やってからなんぼ人辞めていったかわからん。そんなんで落ち込んでたら会社なんかやってられんで。」

 

「わかってる。頭の中ではわかってるんやけど、自分が情けないのと悔しいのとがごっちゃなってて元気がでえへんねん・・」

 

「圭ちゃん、ひょっとしたら辞めていった奴らのこと恨んでるんちゃうか?」

 

「・・・」

 

「そやろ、俺も最初はそう思た。そやけどな、今はこう思うようにしてんねん。 捨てる神あれば拾う神いう言葉あるやろ。捨てる神や。わかるか?この言葉の意味はな、圭ちゃんを捨てていった奴も神さんと思えと言う意味や。そう思たら今度は拾ってくれる神さんも現れるということや。圭ちゃんのために捨てていってくれた神さんなんや。そやから辞めていった奴らに感謝せなあかん。 」

 

感じ入るものがあり、圭太はそれ以降、自分の未熟さゆえ離れていったメンバーのことを悪く思うことを封印することにした。

 

その代わり、そもそも起業して自分のやりたかったビジョンを必ず実現させるという想いを心に刻み込んだのだ。

 

―続く―

 

 コラム: アルバート・エリスのABC理論とは

 

アルバート・エリスとはアメリカの臨床心理学者であり、論理療法の創始者として知られた人。このアルバート・エリスの提唱した理論に「ABC理論」があります。

 

この理論を簡単に言うと、

 

ある出来事(A)が、そのまま感情(C)に繋がるのでは無く、考え方(B)があって、感情に繋がるという理論です。

 

一般的に私たちは感情が状況(ある出来事)から直接引き起こされると考えがちです。

 

たとえば、圭太の場合、役員が愛想をつかして会社を辞めたこと(ある出来事)で、裏切られて腹が立つ、あまりのショックで無性に悲しい(感情)となりました。

 

しかし、ABC理論によれば状況(Affaire)は思考(Belief)によって解釈され、その結果として感情(Concequence)が誘発され、行動に影響するという考え方になります。

 

圭太の場合、友人経営者のガンちゃんからのアドバイスにハッとし、考え方(B)を変えました。役員たちが会社を見限った事実に対して「彼らは実は神様で自分の夢を実現させやすくするためにあえて私を捨ててくれたのだ。」という思考を持つことで「有り難い。感謝しよう」「悪く言うのは金輪際止めて、ビジョン実現にまい進しよう」という感情と行動に変わりました。

 

人生、長く生きていると思考のクセ(習慣)がつき、自分の価値観や常識とは異なる出来事に対し、常にネガティブな感情、イライラしたり、クヨクヨしたりして、その感情が行動を阻害する体質になっていることがよくあります。

 

もしそのような感情が心の中に起きた時、少し落ち着いて、このABC理論を思い出し、起こった出来事に対する考え方を整理したうえで感情を少しポジティブに置き換えることで、その後の人間関係や行動そのものが変わり、 人生が想い通りの方向に進みだすかもしれません。

 

そう、人生は思考が行動を変え、その行動が習慣になり、その習慣が結果に変わるのです。

 

*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています

 

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