実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)」      第十章 大きな決断。パブリックカンパニーになろう
実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)」      第十章 大きな決断。パブリックカンパニーになろう

第十章 大きな決断。パブリックカンパニーになろう

起業して僅か3年で全国トップになったホールコンサルティング。

 

だが圭太には他に夢があった。それは起業した会社を保険代理店で終わらせないこと。ライフナビゲーターという仕事を保険営業から発展させ、顧客のライフ、人生そのものにもっと関わるビジネスへと進化させたかったのだ。保険営業は辛い仕事だ。生き残ることは容易ではない。社会からの評価も決して高くなく、圭太もその低い評価に耐えながら、それをバネに結果をだしてきたクチだった。だから一人で起業するときも、保険会社にいればできない様々な構想を頭に描いて決意したのだ。

 

そしてその中の一つにIPO(株式公開)があった。社会的地位が低かったからこそ、コンプレックスがあったからこそ自分で立ち上げた会社を公開し、世間からの信頼を勝ち得たかったのである。見方によっては独りよがりのエゴと映るかもしれないが、 世の中の保険営業パーソンたちの地位や信頼度を向上させ、この職業を憧れのシゴトにしたい と純粋に思っていたのである。IPOすることがどれだけ大変なことなのか、本当に目指す意義や価値があるのかを細かく検証したわけではなかったが、その想いに男のロマンのようなものも感じていたのだ。

 

会社は順調だった。ヒトも増え、売り上げも増え、もちろんそれに伴い顧客数も増えていた。資金も日々の運転資金に困ることはなかった。

 

「乗合で複数社の保険提案できるということは、商品力で負けることは無い。それが自信に繋がり、生産性に繋がる。今まで売れなかったプランナーもうちに来れば売れるようになった。しかし、これからどんどん契約数が増えていった時、恐らく困ることになると思うんや。」

 

「何が困るんですか?」

 

「保全や。僕らは一人のお客さんに最も相応しい商品を組み立て、複数社の提案をする。だから気に入って契約してもらえてるやろ。でもこれが数年後とか数十年後とかに問合せとか支払いがあったとき、その内容を把握するのが逆に煩雑になるということや。僕らの仕事の本質はただ単に新契約を追求することやない。長期に渡りそのお客さんをフォローし続けることや。保険会社のシステムでは1社しかわからへん。自前でお客さんから会社や担当に連絡あったときに、名前とか電話番号とかで瞬時に契約内容全体がわかるシステムを今から作っとかんと将来きっと困ることになる。それにこのシステムを今から作っといたら、それがあるから、うちに所属して保険を売ろうと思うプランナーが来るはずや。これ、作ろ!」

 

エクセルやファイルメーカーのような簡易ソフトで試作していたシステムでは理想のものにはならなかった。圭太は思い切った投資をしてでもこれを作る必要を感じていた。しかしまだ会社にはそんな資金の余裕はなかった。 そんな時、ある友人が地元京都で上場したベンチャーキャピタルの社長を紹介してくれた。ベンチャーキャピタル(VC)は上場を目指す企業に資金を出資という形で支援する会社で、上場後にキャピタルゲインでその投資を回収するというビジネスモデルだ。圭太は考えた。

 

―もしここで、この会社に認めてもらえれば資金が入る。そしたらシステム開発に踏み出せる。でもそれはうちが株式公開を目指すという意志の表明や。今からそんな覚悟してええんやろか・・-

 

もちろん大きな意思決定だけに役員会にはかる必要はあったが、この頃は元々のビジネスモデルを描いた圭太の発言に反対する役員はいなかった。

 

「よし、 うちは株式公開を目指す。パブリックカンパニーになろう! 皆その覚悟はできてるか?」

 

「やりましょう!」

 

この決断がこれからの圭太の人生を大きく変えることになる。

 

―続く―

 

コラム:資金調達はデッド(借入)とエクイティ(増資)どちらが得策か

会社を経営するとどうしてもお金(資金)のことが頭から離れません。起業するときに今は会社法上は資本金は1円あれば設立できますが、やはり大きく事業を展開したければ、それなりの資金が必要です(リーンスタートアップという方法もありますが)では資金が必要になったとき、金融機関から借入をするのか、出資を募るのかどちらが得策なのでしょうか。前者はもちろん返済が必要です。後者は返済不要です。これだけで見れば出資の方が得ですね。でもタダより高いものはない(笑)

 

出資者は株主に名を連ねるわけですから、物言う株主として経営に口出しされることも覚悟する必要がありますし、期待に応えられない時にその株主から買い取れと言われ、トラブルになったり、人間関係が壊れることも多々あります。では、資金の出し手側からみればどうでしょう。貸し手は利子が儲けとなりますが、元本回収不能リスクを負うことになります。投資家はどうでしょう。投資家は投資先企業からの配当を期待するか、上場や他企業への譲渡で投資時の株価を上回ることを期待して出資を決断しますが、逆にその会社が倒産すればその株は紙くずになるリスクを負うことになります。

 

どちらにもリスクとリターンがあります。だからこそ、そのリスクを最小限にするために出し手はどちらも審査をします。その審査に合格しなければ資金をいただくことはできないのです。その審査のために必要なことは実績と期待値です。実績は決算書です。期待値は中期事業計画書です。過去実績(決算書)は信頼の証しと言っていいでしょう。実績があればこそ未来の計画もそれなりに信頼してもらえるのです。

 

ではまだ実績が無い社歴の浅い企業はどうでしょう。それは経営者の過去の経歴が判断材料となることもありますし、ビジネスモデルそのものに対する期待値や、経営者の理念やビジョン、戦略も大いに影響するでしょう。足元の実績、現存する役員や社員の能力も判断されるはずです。いずれにしても、どちらの方法でも資金を調達できる状態にしておくことが企業としては理想です。

 

経営をしているとイイ時も悪い時もあります。イイ時は資金が要らないのに借りてくれ、出資させてくれと言われますが、悪い時はお願いしても中々イエスと言って貰えません。先方もビジネスなので仕方ないと思うしかありませんね。そう言われないようにするには、とにかく実績(利益)を出すこと、中期事業計画を作成し達成に向けて全社一丸となって取り組むこと。ステークホルダー(利害関係者)と常に真摯に付合い、信頼関係を構築すること。資金繰り表を作成し、最低1年先の資金状況を把握し極力早く準備すること。 あ、それと出資は微妙ですが、借入は貸してあげると言われているうちに借りられるだけ借りておいた方がイイと思います(これ、私の経験談です(笑))

 

*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています

 

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