実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)    第七章 会議を見れば企業がわかる。全体会議という仕掛け
実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)    第七章 会議を見れば企業がわかる。全体会議という仕掛け

第七章 会議を見れば企業がわかる。全体会議という仕掛け

 

「社長、このままでいくと今月で会社のお金無くなりますよ。どうします?」

 

「あ、お金無い?けど大丈夫ダイジョーブ。来月から保険会社からのボーナスがそれなりに入ってくるんで乗り切れるから。わからんけど・・」

 

圭太は極力危機感を顔に出さず、余裕の表情を装いながらも心中はかなり動揺していた。圭太は日常会話でも、話しの最後に「わからんけど・・」、とか「知らんけど・・」とかをつけるクセがあった。下手をすれば来月に会社が消滅するかもしれないという状況で、社員に安心感を与えるために吐いた言葉にも「わからんけど・・」と不安感を与える(ネタのつもり)口癖を自分で悔いた。

 

「取り敢えず今のうちに保険の契約者貸付を申請しておこう。」

 

焼け石に水とはわかりながらもまだ銀行借り入れができる状況にない会社だけに、できることは自己資金を会社に回すことか、友人知人から借りるか出資してもらうことだった。

 

企業経営で最も大事なことはとにかく「資金を枯渇させないこと」。決算が黒字でも資金が枯渇すれば会社は倒産する。

 

結果的に翌月は乗り切れたのかと言えば、主力保険会社のボーナスが当初の予想通りにそれなりにまとまって入り、難局を回避することができた。まずは自らが保険営業で稼ぐという選択をせず、「価値観を共有できる優秀な仲間を増やす」という圭太の戦略は、資金枯渇寸前で踏みとどまることができ、その後更にそのリクルート戦略を加速させることになる。

 

ピンポイントのリクルートだけではなく、前職のツテを辿り乗合代理店に興味を持つプランナーを集め、積極的にセミナーを開催した。そこでは乗合保険会社の数やロイヤリティの低さを「売り」にするのではなく、ビジョンや将来構想を熱く語る事を心がけた。

 

「プランナーも少しずつ増えてきたので、これからは定期的に集まってもらい、会議をしたいと思うねんけどどうかな?」

 

「いいんじゃないですか。やりましょう!」

 

「どうせやるなら、ウチらしいおもろい企画でやろと思うねん!」

 

起業後2年目頃から、前職の部下が参画し、複数人が創業メンバーという形で役員に就任しており、それなりに会社の体をなしていた。圭太のマネジメントスタイルは基本極力ワンマン色を排除し、「指示命令をしない経営」を標榜していた。

 

それは前職の支社長時代にフルコミ(完全歩合制)営業マンをマネジメントしてきた経験から、権威権力で上から高圧的に指示命令するより、スーパーサポーターに徹する方が結果的に生産性の高い組織ができるという想いが強かったからだ。

 

何より自分が人から命令されることが嫌い(基本誰でも嫌い)なのだから、それを人にすること自体やめようという想いも強かった。恐らく多くのヒトはヒトから指示命令されるより主体的に自分の意思でで決めたことの方がモチベーション高く行動するはずだ。

 

全体会議を始めようと思った主旨は、当社は早晩規模が大きくなる。今は名前も顔も一致し、コミュニケーションも取れているが、大きくなればそれもできなくなる。その時の為にも今から揺るがない強い組織にしておこうと思ったのだ。そしてその会議のコンセプトは、

 

① オープン(情報開示)

② ビジョン(目指す方向性を示す)

③ カルチャー(企業文化を醸成する)

 

乾いた手数料の多寡や外発的な報酬でヒトを縛るのではなく、内発的な動機、つまりその組織にいる意義や楽しさや将来の夢がイメージできる会議にすることでロイヤルティを高めること。その為にも、その会議の参加者には社内だけでなく、保険会社や株主等ステークホルダーにも参加してもらい、我々の組織にどんな仲間がいて、どんな結果を出し、どこを目指そうとしている組織なのかを定期的に開示し、内外から応援のエネルギーを貰おうと考えたのだ。

 

特に、③の企業文化については、その会議が醸し出す空気感が組織の縮図であると考え、圭太は 「ユーモア」「笑い」 を意識した。

 

固い、プレッシャーを与えるような会議体ではなく、眠くなるような会議でもなく、リラックスできて面白くて為になる、終わったあとにモチベーションが上がる会議にしたかったのだ。簡潔に表現すると、

 

会社のことを好きになってもらいたかったのだ。

 

これから競合が台頭していく中で「会社を好き」という感情がなければ優秀な専門職(保険営業マンだけでなく)は条件の良いところに移籍してしまうことになりかねない。圭太はその「好き」というポイントを「おもろい会社」というコンセプトにしたのだ。

 

因みに記念すべき第一回は2002年7月9日。まだ募集人は7名。参加人数は保険会社のサポーターの方が多かったが早晩必ずこの比率を変えてやろうと逆にモチベーションが上がった。今と比べると下ネタも許されるまだまだ寛容な時代だったということも有り、会場は何回も爆笑に包まれた。

 

*当時のプレゼン資料

 

その後、4半期に一度の全体会議は組織拡大に伴い、半期に一度となり、その名前を全体会議から「オーナーズカンファレンス」に変え、保険業界の中で「ホールのオーナーズカンファレンスは面白くて為になる」と保険会社の社長が毎回楽しみにするほど評判を呼ぶことになる。

 

―続く―

 

コラム:企業文化の創り方

 

「自社の企業文化をどのように創るか。」起業するときに、企業文化を想定して始める経営者はどれくらいいるのでしょうか?

 

何を売るか。どうやって稼ぐか。どんなビジネスモデルで始めるか。どうやって資金を調達するか。どれくらいの売上を目指すか。何人くらいの規模の会社にしたいのか。自分の年収をどれくらいとりたいのか。おおよそこのあたりの定量的(数字)な欲求に思いを馳せ、企業文化にまで考えが及ぶ経営者は少ないのではないでしょうか。もちろん私とて、最初から強く意識していたわけではありませんでした。ただ、それでも比較的高齢での起業(42歳)であり、それまでの組織も独立に近い完全歩合制の仕組みの中でのマネジメントをしていたことで、それなりの想いを持って起業したほうではないかと思います。

 

企業文化は、理念やビジョンを紙に書いて貼っているだけでは浸透しません。おそらく社長が朝礼や会議で口を酸っぱく言い続けてもさほど効果はないのではないでしょうか。

 

では何が必要かと言うと。

 

それは社長の「行動」ですね。根源的には 社長の行動が企業文化を創る のです。

 

常に目標をコミットする企業文化を創るには、まずは社長が約束を守る人になる。

常に笑いに溢れた愉しい組織にしたければ、まずは社長がいつも笑っている愉しいヒトになる。

 

これが部下に次々と伝播し、組織に浸透していくのです。

 

企業文化は目には見えませんが、なんとなくその職場に入れば感じる空気感があります。これは外のヒトなら誰でも感じるものではないでしょうか。

 

気持ちよくて、また来たいと思える空気か、もう足を踏み入れたくない空気か。

 

まずは社長自身がその空気を創っていることを常に自覚すること。

 

その上で、仕掛けとしてどのようなイベントや会議を企画し、誰を巻き込むかを意図的に考え、実行していくのかが組織としての取組みになるのです。それもやるからには単発で終わらせるのではなく、継続しながらそのクオリティを上げ続ける覚悟を持って始めることですね。自社の企業文化が浸透し、その企業文化に誇りを持つ社員が大勢いる会社が永続的に成長できる強い会社になれるのです(知らんけど・・)

 

*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています

 

 

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