2012年6月から16回に渡り開催された金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」。
この会議の中の議論が進展するにつれ、1996年に乗合が解禁されて以来急成長してきたこの業界の雲行きが怪しくなってきた。乗合代理店は手数料の多寡により顧客に商品を進めているとの疑義が会議の中で出たことで、今まで顧客へのメッセージとして発信していた「公正中立の立場」は、保険会社から販売委託を受けている保険代理店の立場では使ってはいけないという結論になることが明白となったのだ。
生命保険営業の歴史は、大手生保のセールスレディにより成長発展してきた。一説によると戦争未亡人救済の国策として女性を起用したのだと言う。戦後の高度経済成長により日本の生保市場を世帯加入率が90%を超えるまでに発展させた原動力を担ったのだ。ただ、GNP(義理・人情・プレゼント)営業と揶揄され、社会的立場としては余り良いイメージを持たれなかったことも確かだ。
それが1990年頃から新たに外資系生保が戦略として生み出したのが男性営業マンによるコンサルティングセールスだ。社会経験豊富な男性を異業種からスカウトし、パソコンを携えオーダーメイドで保険設計をする「ライフプランナー」(ソニー生命、プルデンシャル生命の登録商標)が、ある意味そのイメージを変えたのだ。
レベル感はともかく、そのスタイルが20年の歳月を経て当たり前になり、その売り方で差別化するのが難しくなってきた時に現れたのが乗合代理店による「公正中立」的な販売手法だった。個別のライフプランニングにより算出した必要保証額を複数の保険商品の中からベストチョイスをして提案するやり方だ。この15年でこの手法は顧客の評価を追い風に急成長してきた。
そしてその急成長に監督官庁が待ったをかけたのだ。
「今まで、僕たちはお客様に対して公正中立というスタンスで営業をしてきた。もちろんそのスタンスはこれからも変わらない。でもこれからは口頭でもホームページ上でもそのメッセージは使えないことになりそうなんや。そやから、今のうちに代理店独自、つまりうち独自のブランディングが必要やと思ってる。」
圭太は取り組むにあたってプロの力を借りようと思った。そしてどうせプロに頼むなら、自分がリスペクトしているクリエイターにお願いしようと思った。そのクリエイターの名前は小川訓生。日本で一番売れていると言っても過言ではないトップクリエイターだ。そうと決めたら行動するのは早い。恐らく飛び込みでアポを取ろうとしてもそう簡単には会ってくれないと思い、まずは講演会に参加し、その懇親会で名刺交換し、その時に改めてお願いすることを決めた。
「私、訓生さんの著書はすべて読ませていただいています。今日の講演もとても共感しました。唐突ですが、是非一度弊社の事業内容を聞いていただけませんか。その上で、もし我々の事業や会社そのものに共感いただけたとしたら、弊社のブランディングをお願いしたいのです!」
圭太は社内にプロジェクトを組成した。メッセージを届けたい対象顧客は誰か。その対象顧客に届けたいメッセージは何か。弊社が他社に負けない強みとは何か。何回もの打ち合わせを経て出た結論は、ホールコンサルティングの強みはやはり「人」だということ。
金融の知識、FPの資格、業界キャリアのみならず人生経験豊富な人生の達人たちが、じっくり顧客の夢や悩みに向き合い、ライフプランニングを通じて提案する保険商品と、その後の長きにわたり継続する顧客との関係性を維持することができる専門職で構成されているということだと結論づけたのだ。そしてその「人」のクオリティそのものを世の中に知らしめていこうと決めたのだ。
トーン&マナー(ブランド戦略における、デザインやメッセージなどの一貫性、統一感)
を揃えるために、ホームページを刷新し、実際のFPと顧客を登場させたテレビCM、小川訓生氏との対談を掲載した雑誌掲載などブランディング戦略を進めていき、そして 「将来設計士」というネーミング が誕生することになる。
全体会議の席上、圭太はいつになく熱く語った。
『僕は「将来設計士」をただの乗合保険営業マンの呼称に留めるつもりは毛頭ありません。近未来的には金融商品全般から生活全般にいたるまで、顧客の人生そのものを引き受ける新しい職業に昇華させていきたい、本気で僕はそう思っています。だからこの職業をこの名称をみんなの力で育てて欲しいのです。将来設計士という存在をまずは日本に知らしめようではありませんか!』
―最終回に続く―
ブランディングとは簡単に言うと、「共通のイメージをユーザーに持たせる手法の総称」。著名なクリエイター小山薫堂さんの言葉を借りると、
「ブランディングとは予め刷り込まれた価値への感情移入」
となります。
つまり、そのブランドのロゴやCMのキャッチコピーを見たり聞いたりしただけで、一般消費者がそのブランドをイメージさせる一連の行為ということです。小山さんの著書を引用しますと、
『テーブルの上にカレーライスが置いてあります。
特に何の変哲もないごく普通のカレーです。
続いて、年配の女性が紹介されました。
「このカレーを作った鈴木さんです。」
カレーについて質問され、鈴木さんが答えます。
「まぁ、人参とジャガイモを切って・・・・・・・・ルーは市販のものです。」
特にコレという作り方でもなく、普通でした。
ここまで説明を聞いて人に尋ねました。
「食べてみたい人いますか?」
・・・・・
誰も手を挙げず。
「じゃぁ、少し鈴木さんについてお聞きしましょう。鈴木さん、息子さんがいらっしゃるんですよね?」
「えぇ、ひとり。」
「どんな息子さんですか?」
「そうですね、野球ばっかりやっている息子です。今は大リーグにいます。」
えっ?もしかして・・・
「息子さんのお名前は?」
「はい、イチローと言います。」
や、やっぱり!
「カレー、食べてみたい人?」
全員が手を挙げたことは言うまでもありません。
これがブランディングです。モノは何も変わっていませんが、価値は全然違います。あのイチローが毎朝食べているというカレー、その原点のカレーですから、誰もが一度食べてみたいと思うでしょう。 モノの後ろ側にあるストーリー、これがブランディングの第一歩 です。』
となります。
また、マーケティングの第一人者、あのUSJを劇的に変えた森岡毅氏はブランド戦略の重要性をプレファランス(好意度)という表現で使われています。
「プレファランスとは消費者のブランドに対する好意度のことで、どの企業も消費者視点を最重要視して、プレファランスの向上に経営資源を集中させねばならない。」
「テーマパークや遊園地のような集客施設として思い浮かぶブランドは何ですか?」という質問に対して、真っ先に名前が上がることが重要だということです。
一般消費者が「保険を見直したい」と思ったときにどの保険代理店を想起するか、またどんな人の名前が上がるか、個人個人のレベルでは今担当している保険営業マンの信頼度が高ければその人の名前や顔が出てくることはあるでしょう。
ただ、保険代理店の名前がでてくることはまだ中々ないのが現状かもしれません(ほけんの窓口くらいかも)。
保険会社ではなく、保険代理店の名前をどう一般消費者の頭の中に想起させるかにリソースを投入する時代はもうそこまで来ています。
*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています
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