話を保険ビジネスに戻そう。
いよいよ2007年12月には銀行窓販が全面解禁になる。郵便局という全国ネットワークも生命保険を売り出す。百貨店やスーパーにも保険ショップがどんどんオープンしている。知名度の高い誰でも知っている店でいつでも保険が買える。もうどこででも保険に入れる時代だ。事実1996年には60万店以上あった既存の保険代理店(損保)は今では半分以下の25万店ほどに減少していた。
保険業界は1990年代にカタカナ生保がコンサルティングセールスで業界に新風を吹き込み、2000年代にはそのコンサルティングセールスの進化形として乗合代理店が更に複数保険会社の商品を組み合わせたオーダーメイド設計をすることで急成長してきた。圭太はまさにこの変革期に業界に飛び込み、自らその変革を体現してきた一人だった。
「この業界は、変わろうとしている。今まで通りに成長すると思ってたらえらい目に合うで。うちらより知名度も金も、何よりすでにマーケットを持っている大資本がこの業界に参入してきてるんや。みんな40兆円の巨大マーケットを獲りに来る、今まで以上の戦国時代に突入していくんや。そやから時代が変化する前にこっちからさきに変化(へんげ)せなあかん!」
経営危機を乗り越え、安定成長に入ったホールコンサルティングではあったが、圭太は常に言いようのない不安感を払拭することはできず、むしろその不安感は募るばかりであった。
圭太は、自社を業界のトップセールスで組織したことを、「弊社はスーパーカー(業界のトップセールス)を目的地まで走らせる高速道路をつくる事業」と例えていた。
つまり、商品の品揃えや、オフィス環境や、顧客管理システムを提供するインフラ整備業だと。だから思い切りその道路をフルスピードで走ってくれと鼓舞していたのだ。そのインフラ整備のために、圭太は顧客管理システムを開発していた。
ベンチャーキャピタルから調達した資金のほとんどを顧客管理システムの開発につぎ込み、自社のFPの顧客管理から行動管理など管理業務全般をサポートするシステムを既にリリースしており、更に追加投資をしながらブラッシュアップしたものが自社のインフラとして定着してきたのを機に、外販に踏み切ることにした。
また圭太は、そのインフラ整備業に加えて、スーパーカーそのものを作る事業を加えることを決めた。それは既に出来上がっているFPを引き抜いてくるのではなく、自社で人を育てることを始めるという意味であり、そのためには教育体制を構築することと、マーケティング(見込客発見)を組織として本気で取り組むことの決意の表れだった。フルコミッション(完全歩合)型の募集人と固定給型の募集人を併存させ、高齢化傾向にある組織の若返りと顧客の承継を担う人材を今から用意しておくことで差別化を図ろうとしたのだ。
「今まで、乗合代理店は、一人や少人数でやるより、大きい組織にしてスケールメリットをシェアするという、ただ収入の多さだけを謳い文句にして拡大を競い合ってきた。でもそれだけで経営をやっていける時代は早晩終わるはずや。元々弊社の事業概要に「保険事業独立支援システムの開発と運営」と書いたのは、そんなチープな発想やない。これから弊社は、CSB(カスタマー・サティスファクション・バックアップシステムと命名)を乗合代理店のインフラ、つまり乗合代理店を始めようと思ったらこのシステムが無かったらやっていけないくらい世の中に広げていく。いわば保険事業支援事業や。同業者にうちのノウハウを提供しながら乗合代理店経営の成功と顧客満足の最大化を支援していくんや。それと、直販チャネル(固定給型社員)を立ち上げる。このまま、高齢化していけば組織に未来はない。研修事業のノウハウを活かしながら自社で人を育てる力を身に着け、今以上に強い組織になるんや!」
まだ大きな変化は顕在化していなかったが、圭太は生来のビビり(不安)体質から他社や人より半歩先に行動を起こしていた。
―続く―
経営は環境適応業といいます。経済環境や自然環境の変化、法律の改正などで景気の変動やビジネスモデルの変革を余儀なくされることが多々あり、自身や自社の努力だけでは抗えないことが発生します。もし、そんな変化の予兆が事前にわかれば被害は最小限に抑えられるばかりか、やり方によってはその変化を大きなチャンスに変えられる可能性があるのです。では、その変化の予兆はどうすれば察知することができるのでしょうか。
1つは、情報収集力。常に自社の属する業界や国内、海外の経済環境など、情報を様々な媒体から収集し、変化の予兆を察知するための勉強を怠らないことです。もちろん新聞やテレビ、雑誌、書籍などで情報収集することも大事ですが、情報ソースが間接的(媒体経由)であり、発信者の恣意がかなり入る可能性がありますのですべてを鵜呑みにするのは危険です。複数の媒体を読み、俯瞰的に判断することですね。また、最近はSNSの普及により一次情報(直接情報を持っている人)がスピーディに入手しやすくなりました。
よって緩やかな繋がりを持つ個人からの情報も貴重な情報源です。ですが、その発信者の信頼度をどうはかるかが注意点ではあります。怪しい人ではないか、結局自分のビジネスに繋げるために自分都合の解釈で情報発信していたのかと後悔しないように発信者の信頼度を測れる目を持つ必要はあります。
そして最も貴重なのは、直接リアルに会って教えてもらえる専門分野に強い人との繋がりです。情報はより上流からスピーディに、かつ詳細にとれる状況を作ることで人より先に行動を起こすことができるのです。
もう1つは、上記のような客観的事実の情報をアンテナを高くして収集するのではなく、自分自身の直観力を磨くこと。
いわゆる「虫の知らせ」的などこからともなく降りてくる情報をキャッチする力を研ぎ澄ますということです。直観力が研ぎ澄まされると、危険を察知したり、偶然の出会いが多くなったり、勝手に進むべき方向性を示されたりすることが起こり始めると言います。
そしてその直観力を磨くために効果的なのが「瞑想」です。
一昔前は「瞑想」をやると聞けば、かなり妖しい信仰宗教団体のように捉えられていましたが、今では大手企業も社員の生産性向上のために取り入れたり、精神疾患者の緩和のために病院のプログラムに取り入れたりとかなりポピュラーな存在になってきました。
マインドフルネスやソーハム瞑想など手法は様々ですのでご興味ある方は是非ご自身で情報収集されたうえで、トライされることをお勧めします。
*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています
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