実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)    第五章 挑戦の始まり。満を持して創業す
実録風小説「ザ・購買エージェントへの道(起業編)    第五章 挑戦の始まり。満を持して創業す

第五章 挑戦の始まり。満を持して創業す

「短い間でしたがお世話になりました。」

「もう転勤なの?」

「はい、い、いえ地元に帰って起業することにしまして・・」

「まぁ、それはおめでとう。」

「あの、これ昨日の送別会で貰ったんですが、持って帰れないのでよろしければ枯らすのも可哀想なんで活けてやってもらえませんか?」

「あら、ありがとう。喜んでいただくわ。」

 

2002年3月某日、東京のマーケティング会社の送別会で社員達から貰った花束を1年間お世話になった大家さんに手渡し、マンションを引き払った。僅か1年、されど1年。住む場所と時間配分と付き合う人を変えたこの1年は圭太にとっては辛くもあったがかけがえのない有意義な1年でもあった。

 

この間に出会った人や得た知識やノウハウは今後のビジネスに大きな影響を与えることになる。

 

京都に戻った圭太は自身が描いた乗合代理店の経営を本格的にスタートした。1年間、二足の草鞋を履きながら温めたビジネスモデルが果たしてイメージした通りに行くかどうか、怖くもあり楽しみでもあった。

 

マネジメントは保険会社の営業所長を4年、支社長として5年、東京での雇われ役員として1年のキャリアがあったものの、あくまでそれは決められたビジネスモデルの中でのマネジメント。

 

今回は自分で描いて自分で実行していくという起業のマネジメントだった。1年間の準備期間の中で私が描いた構想に共感してくれた元部下や友人からの出資を募り当面の資金を確保し、スタートからアシスタント1名、プランナー2名が参画してくれた。ただ、家賃や人件費等固定費は出ていくので当初はもちろん赤字。

 

しばらくは自分の報酬はゼロでいくしかないな・・・

 

この1年は京都東京を毎週往復する交通費、東京での家賃など二重生活を余儀なくされたことや起業時の資本金拠出で今までの預貯金は減る一方だった。圭太は保険会社時代から掛けていた生命保険の契約者貸付けで暫くはお金を回していくしかなかった。

 

生命保険は有難いな・・・

 

万一の為の遺族に対する保障という本来の意義ではなかったが、それなりの金額を掛けつづけて貯まっていた生命保険の解約返戻金の価値を苦々しくも実感した。

 

ところで、世の中の家庭を持つ身で起業した経営者たちは生活費の捻出はどうしているのだろう。これは各家庭によって異なるとは思うが、一般的にはすべての給与を全部妻に渡して毎月定額を貰う、もしくは必要な時に必要な額を申請?するパターンか必要な生活費を定額で渡して残りは自身がコントロールするパターンの二つではないだろうか。圭太はフルコミッション(完全歩合)の保険会社に在籍している時からずっと妻に定額を渡すパターンを取っていた。よって妻にはいくらの収入かは知らさずにいた。

 

どちらがイイかの意見は分かれるところだが、「無謀にも独立なんかするから・・」なんて愚痴を言われないように、また余計な心配をさせてネガティブな感情が家庭内に拡がることが自身にとっても経営にとっても決してプラスにはならないだろうという想いが強かったからだ。よって苦しくても決めた生活費は淡々と妻に払うとことを最低限の自分との約束にしていたのだ(後々には妻に頭を下げてお金の無心をすることになるのだが・・)

 

圭太の事業計画ではこれからの1年間で20名のプランナー(保険募集人)を採用できなければ資金が枯渇し、会社は立ち行かなくなるという計算だった。よってまずは如何にキャリアのある優秀なプランナーを自社に招き入れるかが勝負。圭太の思い描いたビジネスモデルはフランチャイズ(以下FC)モデルに近かった。プランナーをフランチャイジー(加盟店)に見立て、会社はFC本部として商品の供給やシステムやオフィス、アシスタント等バックオフィスのサポートをする代わりにロイヤリティをいただくというもの。

 

規模が大きくなれば仕入コストが安くなるのが一般のFCであるが、保険代理業の場合はその代わりにスケールメリットは保険会社からのボーナスやインセンティブに反映する。それを仕入れコストの代わりにプランナーに再配分する仕組みにした。

 

圭太は元々新卒で就職したのは大手流通業でその会社には10年お世話になった。その当時流通革命という言葉で一世を風靡した企業だ。

 

「これから流通は川下、つまり川上のメーカーではなく、お客さまに近い川下がイニシャチブを握る時代になる。その為には規模の拡大が必要だ。」

 

という教えは、保険流通の世界にも必ず当てはまるはず、という強い想いがあった。よって独りで起業した時から規模拡大モデルしか頭になかった。その規模拡大の一歩となる起業初年度に加盟を促進する為の「魅力」をどう創り、どう見せるか、見せるとは「魅せる」ということ。

 

つまりプレゼンテーションにおけるその資料や説明する言葉、もちろんその意図や意義、掲げた理念やコンセプトに魂を込めるだけでなく、それをどうわかりやすく伝え、心に刺さるものにできるかどうかだ。満を持して創業し、果たして描いた夢が夢通りにいくのかどうか。

 

圭太の挑戦が始まった。

 

―続く―

 

コラム:幸運は能動的な人にのみ訪れる

起業するときに事業計画をたてて始める経営者はどれくらいいるのか。また、その立てた事業計画通りに結果を出せる経営者はどれくらいいるのか。

この数値は定かではありませんが、前者は銀行や金融公庫等から資金を調達する場合には必要になりますので、その為に税理士さんに相談して作成する経営者は結構いるのではないでしょうか。

 

その立て方については、ネットで検索してもたくさんでてきますし、専門に相談に乗られる税理士の先生やコンサルタントも世の中にはたくさんいますのでここは割愛したいと思います。私の場合は借入を前提とせず資本金の範囲でスタートしましたので、外部に見せる必要はありませんでした。ただ、もちろん出資をお願いする個人投資家には事業説明が必要でしたのでそれなりに「夢のある?」いわば大風呂敷に近い事業計画書を作成して資金を募りました(笑)

 

私がその夢通りに結果がだせたかどうかは今後の本編に譲りますが、一般的には余程の辣腕経営者でなければ起業当初から計画通りに結果を出すのは難しいのではないでしょうか。特に営業系の経営者の場合は、「これだけやるぞ!」という気合を込めた目標=事業計画になるケースが多いと思います(私もその口です(笑))

 

ただ、これが上場企業となると事業計画の意味合いはかなり変わります。なにしろ、売上高で10%、経常利益で30%の増減が出ると予測された時点で「適時開示」する規則があるのですから。これは企業の業績予想を信頼して投資家は株式売買をする訳ですから、その企業が結果的に「ウソ」をついたことで投資家が損をすることに繋がると判断されるからです。

 

よって優良企業であればあるほど滅多なことでは業績予想は狂いません。これは事業計画策定の精度の高さもあれば、期中でギャップが出た時に、期間内に修正できる戦略や仕組みを持っているということです(それができなければ上場はできないということです)

 

17年前、経営者としてはズブの素人だった私は、事業計画というものをそこまでシビアなものとして受け取ることもできませんでしたが、本来はそういうものだということです。

 

ではこれから起業する方にはそれだけの覚悟を持って「ぶれない計画」を立ててから起業した方がイイと言うのが杓子定規な答えかもしれません。ただ、私の経験や巷の成功している経営者を見るにつけ、そこまで練って起業した人はごく僅かです。ほとんどが勢いで起業しています。私もいつまでも練り続けて起業しないよりは「エイ、ヤー」でも一歩踏み出すことを勧めます(もちろん無謀な決断で家族や社員を路頭に迷わすことはお勧めしませんが)

 

因みにスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ博士が提唱する「計画された偶発的理論」によると、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」ということです。つまり大半のビジネスパーソンのキャリアは、偶然の出来事によってつくられており、計画通りになった人などほとんどいないということです。

 

でもこれは「キャリアは偶然に任せておけばいい」という意味ではなく、「キャリアは偶然の積み重ねで成り立っているものの、日頃から能動的な行動パターンを取っている人には、自分にとってより好ましいコトが起こる。」幸運は主体的になって、自分が影響を与えられる範囲でできることを一生懸命やっている人に訪れるものであり、主体的な人には「好ましい偶然=幸運」が起こると言うことです。

 

更に博士は、その計画された偶発性は、

①「好奇心」(絶えず新しい学習の機会を模索し続けること)

②「持続性」(失敗に屈せず、努力し続けること)

③「柔軟性」(こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること)

④「楽観性」(新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること)

⑤「冒険心」(結果が不確実でもリスクをとって行動を起こすこと)

という5つの行動特性を持っている人に起こりやすいとしています。経営者であろうが会社員であろうが、この5の行動特性を習慣化することが成倖の(倖せに成功する)キーワードなのかもしれません。

参考文献:プレジデント2015.6.15号 100%運がよくなる「超」思考法より

 

*上記コンテンツは2017年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています

 

 

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