1996年春、圭太はパシフィック生命に入社して早6年目を向かえていた。通常保険業界では2年間で半分以上の営業パーソンが退職を余儀なくされる中、キャリア5年といえばベテランの域といえる。それほど継続して保険を売りつづけることは難しいということだ。
そんな中で圭太は入社以来ずっとMDRT(前章参照)基準をクリアし、社内の海外コンベンションにも連続して入賞する極めて優秀な部類に入るライフナビゲーター(人生の伴走者)に成長していた。 今日は圭太のキーマンである鷲尾社長から誘われて異業種交流会に参加していた。鷲尾社長は圭太の前職の取引先から紹介していただいたアパレルメーカーの経営者で、転職したての頃から何かと目をかけてくれており、圭太も尊敬し慕っていた。
「社長、こんばんわ。」
「おー朝倉君、いい所にきたね。紹介しておくよ。こちらはうちがスポンサーをしている番組のディレクター清原さんや。今日は忙しいのに無理して来てもらったんや。朝倉君にも是非会わせたい思てな。局では有名なカリスマディレクターやで。で、こっちはパシフィック生命のトップセールスマン朝倉君、うちの保険は全部彼に任せてるんや。いつ俺が死んでも番組のスポンサーは降りんでえーで。なっ朝倉君、がはははは。お互い歳も近いことやし付き合ってたらなんかこれからえーことあるやろ。」
鷲尾社長はいつも両者を絶妙なトークでさりげなく持ち上げながら繋ぎあわせてくれる紹介の達人である。
「はじめまして!パシフィック生命の朝倉です。鷲尾さん、いきなりで申し訳ないですが一つ教えていただいていいですか?」
「えぇ、いいですよ。」
「ディレクターの仕事って具体的にはどういうことするんですか?すっごく興味あるんですよ。」
「そうですね、一般的には放送作家さんの書いた台本から、実際に放映される番組を作りあげる、いわばオーケストラの指揮者の役割を果たすのがテレビディレクターの仕事です。テレビディレクター本人が企画を立てたり、台本を書くことも少なくありません。 テレビディレクターとひとくちにいっても、仕事の内容によっていろいろなディレクターがいます。企画をたて、制作のスケジュールを作り、出演者やスタッフを決め、制作費用の計算もします。さらにリハーサルでの演技指導、技術や美術の仕事のチェック、そして本番ではキュー(開始の合図)を出します。生放送以外では、収録テープをあとで編集しますが、どこをどうつなぐかといった構成を決めるのももちろんディレクターの仕事です。
また、こうしたディレクターを助けるのがアシスタント・ディレクター(AD)です。ひとつの番組には、たいてい何人かのADがつきます。イヤホーンでディレクターの指示を聞きながら、出演者に演技開始のサインを出したり、カメラマンや美術部員に注意を与えます。そのADをうまく使うのも仕事のひとつですね。まぁ、ドラマ、バラエティ、ドキュメント、番組の内容によって、仕事の進め方は少しずつ違いますが、基本的な手順はかわりません。ざっと言うとこんなところですかね。」
「へぇー、大変そうですけどすごく面白そうですねぇ。」
「番組が当たるも当たらんもディレクター次第やで。清原君がディレクターした番組はことごとくヒットしとる。たいしたもんやろ。」
鷲尾社長が自分のことのように自慢げに横槍を入れた。
「じゃあ、社長とこの番組もヒット間違いなしですね。」
「スポンサーさんや作家さんの思いを汲んでいつも一所懸命やるだけですよ。それに良いものを創るには決して一人ではできませんからね。」
圭太は“カリスマ”らしからぬ清原氏の謙虚な姿勢に惹かれた。
「清原さん、一度スタジオに見学に行かせて貰っても良いですか?」
「ははっ、トップセールスって聞いたんでいきなり保険の営業されるかと思ったらスタジオ見学ですか。面白い人だ。普通なら断るんですけど鷲尾さんに万が一のことがあっても保険でちゃんとスポンサー料払ってもらわないといけないんでね。じゃ、明日丁度収録あるんで遊びに来ます?」
「ありがとうございます!」
翌日、圭太はテレビ局のスタジオにいた。
「やっ、朝倉さん、ようこそ!ちょっとバタバタしてますんで適当に観ててくださいよ。」
清原は挨拶も程々に小走りで圭太の前を通り過ぎていった。
スタジオにはテレビでよく見かける役者さんたちから大道具、カメラマンといった裏方さんまで様々な人でごったがえしていた。その中で役者への演技指導からスタッフへの適格な指示、全体の進行管理まで清原の仕事ぶりはまさにカリスマと表現して良いほど見事な采配だった。そして圭太は一つの番組を創りあげるのに色々な役どころの人達がディレクターのリーダーシップの元で一丸となって取り組んでいる姿に感動していた。
-清原さんが昨日一人では何もできないと言ってたのがわかったわ・・主役も脇役も裏方もそれぞれがそれぞれの役割を活き活きとこなしてる。清原さんの音頭で一つの方向に向かってる。めちゃくちゃ格好えーわ。-
「清原さんお疲れ様でした。」
「いやいや愛想なしで申し訳なかったですね。」
「いえ、本当に今日は貴重なことを学ばせていただいて感謝感謝です。」
「いや僕は何も教えてなんかないでしょ。せっかくきてもらったのにずっとほったらかしでしたし。」
「清原さんは創り手の思い、つまりスポンサーである鷲尾さんの思い、ニーズを恐らくかなり時間をかけて理解されたはずです。そして、充分な前始末をした上で本番に望まれてるんでしょ。もちろん視聴者のターゲットも充分意識してね。チームが一つの目的、それはスポンサーや視聴者が感動すること、を共有している。そのためにも充分なコミニュケーションを取っている。つまり、顧客志向に基づいたチーム目標の共有化、入念な計画と日頃の良好なコミュニケーションによる一体感の醸成、それとそれぞれの才能を活かすキャスティング能力と言葉で褒めてタッチしながらモチベーションを上げていく細やかな気遣い、すべて計算され尽くした行動です。でもその努力とメンバーへの感謝の気持ち、一人では成し得ないという謙虚な姿勢が伝わってみんなが応援モードになっているとこがまた凄いですよ。」
「いやー、流石鷲尾社長が目をかけてらっしゃるだけのことはありますね。できてるかどうかはわかりませんが日頃意識していることを全部いわれちゃいましたよ。」
「僕は今見学しながら、感動しながら誓いました。それぞれのお客さまの人生、夢の実現をお手伝いするカリスマディレクターになろうって。人生はドラマ。お客さまが描かれた人生という脚本の課題解決と夢の実現をサポートし、より素晴らしいドラマを作り上げるディレクターとなろうと。そのためには僕一人では解決なんてできないんです。今までは自分の能力の範囲でお客様の希望に応えようとしてました。でも色んな能力の人達の力を借りたほうが結果的にはお客様に貢献できるんです。手柄は独り占めにしては駄目なんです。それを盗ませて、いや気づかせてもらいました。清原さん、本当にありがとうございました。」
保険業界のカリスマディレクターを目指した圭太のその後、彼の周りには税理士や弁護士、経営コンサルタントなど様々なスペシャリストが集まりだし企業経営者らの自己実現を支援する問題解決チームのまさにカリスマディレクターとなっていくのである。
続く
<高関与ビジネスパーソンが実践するディレクター機能について>
ディレクターとはエキスパートを束ねて有機的に動かし最大の成果を出す人である。しかも、組織の中ならば当然ある「役職」や「権限」などが全く無い環境で、異能な人々に対してリーダーシップを発揮することが求められる。 以下にその要点をまとめると、
チーム力で得た成果は一人で得た成果とは違った感動を味わえます。あなたもその一味違う感動と一皮むけた成長を実感してみませんか?
*上記コンテンツは2009年に上梓したものを多少手直しし、再掲しています。
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第7章
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