代理店業務品質のあり方。保険業界のミシュランガイドは実現するか。

保険業界が異例の結集

週刊ダイヤモンドの保険特集が発売されました。

この保険特集は一般人の方々にも保険商品を選択する上で参考になる情報が掲載されていますが、業界の中の人に向けた情報も多く、長く定期的に保険特集が組まれているのは恐らく100万人に超える業界人がかなりの比率で購入されるからだと推測されます(ワタスもその一人・・)

その中で『金融庁と生保42社、代理店が異例の結集「代理店の品質」を大議論』というタイトルで2ページに渡り記事が掲載されています。因みにこれは昨年6月半ばにスタートした「代理店業務品質のあり方等に関するスタディグループ(以下SG)」のこと。

このSGでは、金融庁が掲げる顧客本位の業務運営をさらに推し進めるために、乗合代理店13社と二つの業界団体、全国消費生活相談員協会、生命保険会社42社、そして金融庁も参加して、乗合代理店における業務品質の在り方を議論しており、それがいよいよ大詰めを迎えてきたという内容です。

この二つの業界団体のうちの一つである「保険乗合代理店協会」の代表として不肖ワタスもこのSGに参加をしており、先般取材を受けた内容がかなり要約されて掲載されています。

 

保険業界の方々しか興味のない内容かもしれませんが、せっかくなので今回はこの内容についてもう少し詳しく私見も含めて書こうと思います。

乗合保険代理店の変遷

私は保険業界に身を置いてかれこれ30年、乗合代理店として独立して20年、業界団体の代表としても13年以上が経過し、もはやベテランの域を超えてアンモナイト(化石・・)と化そうとしていますが。

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過去にこれ程業界団体が結集して一つの目的に対して取り組もうとしていたことはないのではないでしょうか。

その目的とは何か言いますと、それは「乗合保険代理店のベースとなる業務品質基準」を作ることです。

日本国内の乗合保険代理店は年齢でいうとまだ25歳です(1996年の保険業法改正により1社専属の例外措置として認められた)。

自分の25歳を振り返ってみればわかりますが、まだまだ尻の青い青二才のくせに根拠のない自信で尖がって粋がって調子に乗っていた頃です(え?僕だけ?・・)

若かりし頃は怖いもんなしで無茶をするものです。乗合い要件として募集人2名以上で管理責任者と教育責任者を便宜的に置けば、いとも簡単に乗合代理店ができ、それも募集人を雇用する義務も無かったのです。まして一般過程試験という募集人になるための試験はあまりにも難易度が低いのですからアルバイト感覚の人や兼業しながらや、主婦の名義貸し的なものまで有象無象が参入し、ただ規模の拡大のみを追い求めることで事業が成長できたのです。

それを見るに見かねて、

「こんな半グレをいつまでものさばらせておくわけにはいかんやろ」

とまっとうな大人たちが立ち上がり(笑)、業界の適正化をはかりだしたのが2014年。それ以降は保険業法改正からFD宣言(顧客本位の業務運営方針の公表)と矢継ぎ早に金融、保険業界は変革のスピードを加速させ、そして現在に至ります。

少し不真面目な表現をしましたが、少なくとも僕たちは、対顧客に対しては1社専属よりも間違いなく「顧客本位」であるという信念に基づいて、乗合保険代理業という道に舵を切ったつもりですし、事実乗合代理店は圧倒的な顧客の支持を追い風に急成長してきたのです。

ただ。

業務品質に格差があった(品質が高い人と低い人の差)のは否めません。保険会社(メーカー)も市場が拡大している乗合代理店には自社の売上を上げることを優先し、管理体制に目をつぶってきたこともあるでしょう。法律の建付け上は、代理店は保険会社の委託を受けて保険を販売し、その対価として手数料を保険会社からいただく訳ですが、規模さえ大きくなれば手数料率さえも大きくなるというのが過去の常識でした。それが数年前から、ただ規模が大きくなったらいいのではなく「質」が伴うことで手数料率が上がるという考え方が導入され出しました。それ自体は健全化に向かうものであり真っ当な判断だと思われますが、ただそれが各保険会社による品質基準がバラバラであるがゆえに代理店サイドは困惑し、「この業務品質はホンマに顧客本位の観点で設定してんのかいな」と思われるものもあり、顧客本位と募集品質の一致感が持てない状況も散見されてきたわけです。

そんな紆余曲折を経ながらも、人はやがて立派な大人に成長していくように(笑)

保険業界は更に顧客本位を旗印に、業界あげてバラバラだった業務品質基準を統一していこうじゃないかと、生命保険協会さんが音頭を取って立ち上がったわけですからこれは見上げたものじゃないですか。

もしこれが出来上がったら乗合保険代理店はどうなるのでしょうか。

乗合代理店業界の未来

ここからは私見であり、あくまで希望的仮設です。

 

・ミシュランガイドのように乗合代理店が第三者機関から格付けされる。

・その格付けが一般生活者にも公表される。

・一般生活者はその格付けを判断材料として相談するようになる。

・格付けの低い代理店(の募集人)は信頼度が低いので相談が減る。

・その結果格付けの低い代理店は経営ができなくなり廃業を余儀なくされる。

・格付けの高い代理店には顧客が集中し、更に成長発展する。

・格付けの高い代理店からなる健全な乗合代理店業界が形成される。

・健全な業界になることで優秀な人材が業界に集まりだす。

・そして乗合代理店は真の顧客本位を追求する存在として世の中に認知され更に成長していく。

 

こんなイメージでしょうか。

もちろんここにはそれなりの時間的金銭的コストがかかります。質を追求するための投資がかさみ、売り上げが伴わなければ経営が破綻するリスクも充分考えられます。なので経営者はそれなりの覚悟を持って臨む必要があるのは言うまでもありません。

ここまできたら「担当者がお客様をグリップしていれば業務品質なんて適当でも充分やっていけるし」みたいな安易な考えだけは捨てていただきたいと思うのです。

保険商品の必要度は死亡保障(遺された家族への経済的保証)から、自分が活きるための保証(医療・就業不能・介護など)に重きが置かれるようになりました。ワタスは昨年末期ガンを宣告されて以来、その重要性を身をもって体感した1人です。高齢化が進む日本では益々そのニードが増えていくでしょう。消費者自身がメディアから情報収集(ダイヤモンド誌のような)し、自分に合うものを選択することも必要ですが、それでも最後は信頼できるプロのアドバイスを聞いてから決めたいと思う人が多いのではないでしょうか。

では信頼できるプロを一般消費者はどこから探し当てればいいのか、ですがやはり王道は信頼できる人からの「紹介」かと思われます。もし紹介者がいなければどうすればいいのか。その1つが「人」ではありませんが人が所属する「代理店」です。定量的な基準をクリアした代理店評価があれば、まずはその中から「人」をアサインされるのではないでしょうか(代理店評価の中には募集人への教育体制も有り)。

 

なので。

今回の前代未聞の取り組みを機に。

代理店経営者は今以上に業務品質の向上に取り組み。

所属する募集人は、手数料の多寡や管理の緩さで所属代理店を選ぶのではなく、志も業務品質も高い代理店に身を置くことを最優先にすべきだと思うのですがいかがでしょうか。

 

あ、あくまで個人的見解ですのであしからず。

 

 

生命保険協のウェブサイトに過去の「代理店業務品質のあり方等に関するスタディグループ(以下SG)」議事録が掲載されています↓

https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/index.html

 

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